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第4章 Palmの歴史はVisorの歴史 / 4-2. Palmの開発
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理想のPDAのビジョンはあったものの、仕様の設計は非常に難しかったそうです。限られたハード
ウェアのリソースで最大限の使い勝手を引き出すためには、何が必要で、何が不必要かを冷静に
絞り込んで具体化しなければなりません。大規模なPC用OSとはまったく異なる発想が求められる
のです。これがうまくいかないとどうなるでしょう。不必要にメモリを搭載することでコストが高く
なりますし、機能を詰め込み過ぎることでユーザーインターフェイスが複雑になりスピードも落ちます。
これを補おうとしてハイパフォーマンスのCPUを使えばそれに応じて消費電力も大きくなり稼働時間
が短くなってしまいますし、価格も高くなります。こうなってしまったら理想のPDAとは呼べないでしょう。
この典型的な例としてMicrosoft社のWindowsCEマシンがあげられるかも知れません。

ジェフ・ホーキンズは後にこう語っています。「シンプルさが成功の鍵なのだ」と。
機能のシンプルさから一見開発が簡単そうに思えるPDA向けOSですが、機能の取捨選択こそが
難しいのです。開発にあたり「なぜその機能が必要なのか?」と問いかける自制心が何に増しても
重要だったそうです。

Palm Computing社では、開発にあたり入念なマーケット調査、モニターテストを繰り返したといいます。
ハードウェアのおおまかな仕様は、正方形の液晶画面、入力スペースは別に取り、スクロール・アプリ
起動のボタンをつける、といったものでした。ユーザーインターフェイスの設計は実際に稼働させる
前に、MacintoshのHyperCard上でシュミレーションしてユーザーテストの結果をフィードバックさせて
いったのだそうです。余談ですが、PalmOSがMacintoshのテイストを持つように感じることがあるのは、
こんな開発背景が理由かも知れませんね。

デビューさせる以上中途半端な製品は出さない、という開発グループの気合いの入った仕事で、
ついに理想のPDAが完成しました。そして1996年3月ついに「Pilot 1000/5000」の名称でUS Robotics社
から発売されました。その後順調にセールスを続け、PalmデバイスはPDA初のヒット商品となりました。
ユーザーが増えることで、サードパーティーから周辺機器やソフトウェアがリースされ、Palmwareと
呼ばれる多様なソフトウェアの個人開発も進んできました。開発環境を公開していたことが好循環の
ポイントでした。あっという間にプラットフォームと呼ぶにふさわしいPDAのデファクトスタンダードの
立場を築き上げたのです。
写真:Pilot 1000/5000

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